これからも、いつまでも。スターバックス卒業のことば。

先週末、スターバックスでの最終勤務を無事終えてきました。おかげさまで、お客様とパートナーのみなさんにきちんと挨拶ができ、バリスタとしての仕事を心から楽しむことができました。

今の段階で言うのは早すぎるかもしれませんが、人生の中で忘れられない一日になったと確信しています。スターバックスでの、特にタワーズ第2期(2012年9月以降)の仕事は、ぼくに一生影響を与え続ける原体験になるんじゃないかな。



最終勤務の前後で頭の中を駆け巡った思いのすべてを、ブログにぶつけてやろうと思いMacに向かいましたが、いろいろと書いては消し、また書いては消し、結局すべてボツになりました(笑)。

ぼくにとってバリスタは天職の一つでしたが、その思い出すべてを一投稿にまとめることなど無理です。だから今日はシンプルに、感謝の気持ちだけを記すことにしました。たくさんのありがとうを、みんなにシェアします!

バリスタという素晴らしい仕事に巡り会えたこと。

スターバックスのバリスタが持っているミッションは、つながりの瞬間を創り出し、人々の日常を潤すことです。飽き性のぼくが通算5年半も続けられたのは、この崇高なミッションに心から共感できたからです。

ぼくがスターバックスに出会ったのは高校時代。他の飲食店とは明らかに違う何かを感じ、理由を面接で説明できないまま入社しました(笑)。その何かこそが、前述のミッションだったことに、長年働いてようやく分かりました。

もちろん、職人肌のぼくにとって、バーにいる時間は特に至福の時間でした。うっとりするような、美しくおいしいドリンクを作ることが楽しくて仕方なかった。エスプレッソの神様、長い間見守ってくれてありがとう。

美しく、奥深きコーヒーの世界。

入社時は1ミリしかコーヒーを飲めなかったぼくにコーヒーのおいしさを教えてくれたのは、これまでに出会った素晴らしいコーヒー豆たちそのものであり、また、その生産や流通に関わった見知らぬ人びと、一緒にテイスティングを重ねたパートナー、そしてコーヒーをこよなく愛するお客さんたちでした。

ブラックエプロンを2度ももらえたのは、こうした仲間たちの支えのおかげです。人生の大きな楽しみを教えてくれて、ありがとう。在校生のみんな、早くこの魔法のマントを手にしてください(笑)。

支え、見守り続けてくれた両親へ。

大学を疎かにしていたぼくに早く辞めろと言いながら、数年後には一転、スターバックスに就職しろと言ってくれましたね(笑)。なかなかちゃんとした大人になりきれないぼくを、支え続けてくれてありがとう。

早く立派な大人になって恩返しします。それまで元気にぼくを叱り続けてください。

パートナーのみんなへ。

このセクションが一番難しい(笑)。5年半の思い出はすべて、パートナーとともにあります。

尊敬すべき先輩がいました。苦楽を共にした同期がいました。一緒に成果を出したチームメンバーがいました。かわいい後輩もできました。その全員と、同じ目的を持ち協力しあい、最高の毎日を創り続けました。

思い出は店の中にとどまりません。たくさん飲みに行ったね。旅にも出かけました。カフェで何時間も語りました。進路相談をしたりされたり。空が明るくなるまで夜更かしして夢を語ったり。

公私ともに、みんなは文字通りぼくの人生のパートナーでした。二人三脚?30人31脚?で歩み続けたこの5年半。宝物です。一人ひとりへの感謝は、これから人生をかけて伝え、示していく覚悟でいます。一緒に働けて本当に楽しかった。幸せでした!

タワーズのみんなへ。

良い意味で、プライドが高く妥協を知らない頑固なやつらでしたね(笑)。しっかりしたみんながいたから、だらしないぼくでもコーヒーの専門性をとことん追求したり、マニュアル化できないお客様との信頼関係作りに集中し、さらに成長することができました。

特に最終日は、コーヒー豆やリザーブなど、3時間近くオペレーションから離れていましたが、嫌な顔ひとつせず店を守ってくれましたね。ぼくはさながら三井寿のごとく、みんなを完全に信頼しきって、自分のすべきことに没頭できました。ありがとう。

みんながいるから何の心配も無く旅立てます。これからも妥協せず最高のお店創りに情熱を注いでください。

あえてお客様とは呼びません。あなたへ。

閑話休題。一風堂で働いていたとき、創業者の講演を生で聴く機会をいただきました。そのとき彼が言っていたのは、「お客様」というお客様はいないということ。お客様にはそれぞれ名前があり人生があります。その一人ひとりと真摯に向き合うことの大切さを教えていただきました。

それから数年後、奇しくも退職を目前にしてようやく、ぼくもそれを実感することになります。教えてくれたのは、ぼくの淹れるコーヒーを心待ちにしてくださるOさん、フードペアリングのセンスはパートナー以上なYさん、漫画家のSさん、仕事の後で夢に向かいひたすら資格の勉強を続けるNさん、大好きなカスタマイズドリンクを仕事の合間に飲みにくるFさん、お昼休みに自分の時間を過ごしにくるIさん、…たくさんの常連のお客さんでした。

昔誰かが言っていました。人生とは過去でも未来でもない。現在この瞬間だけが人生なのだと。ぼくたちの仕事は、つながりの瞬間を生み出し、人々の日常に潤いを与えること。その日常というのは、出会ったお客様一人ひとりの、現在進行形の人生そのものです。みなさんの人生に関わることができて光栄に思います。心から、ありがとう。

約1ヶ月前(3月11日)、タワーズは13周年を迎え、僭越ながら記念にテイスティングパーティーを主催させていただきました。感謝の気持ちを伝えるため一生懸命やらせていただきましたが、2時間では全然足りませんでした(笑)。だから決めました。これから一生かけて、出会ったすべての方に恩返ししていきます。

これからも、いつまでも。

ぼくはスターバックスを卒業しますが、スターバックスのミッションはぼく個人のそれへと引き継がれます。つまり、これから一生かけて、人々の日常に潤いをもたらすことを追求していきます。昨年文章化したぼくのミッションを改めて記せば、「美しいものの創造と追求を通じて、人々の日常と心を潤し続ける」ことです。そのためにぼくはウェブの世界に飛び込みます。

これからも、楽しいこと、苦しいこと、いろいろやってくると思いますが、これまで出会った人たちとこれから出会う人たち、そして出会ったことのない人にまで、日常がちょっとだけ潤って幸せを感じられるような、そんなあったかいものを創り出していきたいと思っています。ウェブでそういうもんを創り出す、そういう意味で、ぼくの新しい肩書きは「ウェブクリエイター」です。

世界を変えるなんて大それたことは言いません。でも、出会ったあなたをちょっとだけ幸せにすることに、ぼくは人生をかけていきます。その一つひとつがまわりまわって、世界がちょっとだけ幸せになったら、ぼくが生を受けた意味があるんじゃないかな。

2013年4月。満開の桜にも祝福されて、新たな人生への一歩を踏み出すことができました。いまここにいる自分をつくってくれたすべての人と、その触媒となってくれたコーヒーへ感謝をこめて。ありがとう。

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